Beranda / ファンタジー / こちらギルドの調査員 / 第3話 面倒事は勝手にやって来る1

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第3話 面倒事は勝手にやって来る1

Penulis: 月城葵
last update Tanggal publikasi: 2026-06-15 12:04:59

 翌朝。

 はい、今日も元気にお勤めです……いや、元気なのは街の方で、俺じゃないけどな。

 ……また、ひどい顔だ。

 鏡の中で、眠れぬ夜を引きずった目がこちらを睨み返していた。

 黒い髪も乱れ放題。

 どう見ても「仕事ができる人間」には見えないね。

 支度を済ませて宿舎を出ると、すでに通りは人でごった返していた。

 パン屋の小僧が火魔法で窯に火をつけ、大工は風魔法で木屑をぶっ飛ばしている。

 向かいの主婦は水魔法で桶に水を張りながら、隣と世間話。

 戦場じゃ殺し合いに使われる力も、ここじゃ炊事洗濯の延長。

 便利だよなぁ。

 俺の世界にも欲しかったよ。

 で、石畳を抜けてギルドへ。

 朝っぱらから大扉全開、冒険者たちの笑い声が耳に突き刺さる。

 あれを「活気」と呼ぶか「騒音」と呼ぶかは、人による。

 少なくとも俺は後者だ。

 カウンターにはカエデ。

 笑顔満点で「おはようございます、アルさん」ときた。

 はいはい、おはようございます。

 相変わらず営業スマイルが完璧だな。けど、俺に向けるときだけ、ちょっと柔らかくなるのは、気のせいじゃないはずだ。

「昨日の件、報告されていますよ」

「魔道具の残骸のことか」

「はい。今、ウィザーズギルドで確認中だそうです」

 ……あぁやっぱり。うちじゃ手に負えなかったんだな。

 魔術師ギルドに鑑定を依頼する事態。つまり、面倒事確定ってことだ。

 奥から俺を呼ぶ声がする。

「お~い、アル! ちょっと来い」

 丸眼鏡のマルセル課長が、机の上の依頼書を手に呼んでいる。

 いつもはのほほんとしてるのに、こういう時の声だけは、やけに通るんだよな。

「南の集落から調査依頼が来ている。家畜が繰り返し襲われているらしい」

「……魔物か、獣か」

「そこを確かめてきてくれ。お前ひとりでいい」

 はい出ました、おひとり様確定。

 まぁ、気楽でもある。

「了解」

 依頼書を受け取って肩をすくめる。

 ……へいへい、いってきま~す。

 ◇ ◆ ◇

 まずは腹ごしらえより先に準備だろ、ってことで道具屋へ。

 カウンターの奥からタマ婆さんが、「いらっしゃい」と顔も上げずに声をかけてくる。

 ここの挨拶は、半分罵声みたいなもんだ。

「上薬草、まだ残ってるか?」

「あんたも運が悪いねぇ。昨日、どっかの阿呆が、しこたま買い込んでったよ」

 チッ、やっぱりか。

 ちなみに上薬草ってのは、要するに高級湿布だ。

 冷やして貼れば、痛みが和らぐし、腫れも引く。

 だが、冒険者が使うなら、普通の薬草を煎じて飲むか塗る方がよっぽど効く。

 つまり、上薬草に大枚はたくのは金の余ってるバカか、新米冒険者の見栄張りだ。

「で、他に買うもんは?」

「粘着玉と、匂い消すやつ」

「あいよ、毎度あり」

 奥の棚から、がさごそと取り出して袋に突っ込む婆さん。

 粘着玉は、投げつければ敵の足を縛れる便利アイテム。

 匂い消しは森での必需品。

 俺は狩人じゃないが、調査員は足跡と臭いで仕事することも多いんでね。

 代金を置いて、次はテッタの食堂へ。

 店先でテッタが「おー! アル兄ちゃん、今日は一人か!」と声を張り上げている。

 声のデカさで言えば、街一番。

「弁当、一人前。肉多めで。あと、軽く食えるやつ」

「まいど! 元気出して行けよぉ!」

 弁当を受け取って腰の袋に突っ込み、深呼吸一つ。

 さて、仕事に出発しますかね。

 腹も道具袋も揃ったところで、南の門へ。

 石造りの城門の下には、今日も相変わらず気の抜けた門番が二人。

 槍を抱えて突っ立ってるが、こいつらが真面目に検問してるのを見たことがない。

「おう、アル。調査か?」

「そんなとこだ……で、門番やってるフリは順調か?」

「余計なお世話だ」

 軽口を返しつつ通り抜ける。

 まぁ彼らの怠慢っぷりも、平和の証ってやつだろう。

 ありがたく通らせてもらう。

 城壁を抜ければ、南に延びる街道。

 石畳はしばらく続くが、すぐに土の道に変わる。

 左右には畑が広がり、農民がせっせと鍬を振るってる。

 家畜の鳴き声、麦の匂い、遠くで鳴く犬。

 ペテルの喧噪とは別の、のどかな生活音だ。

 ……もっとも、のどかなら俺の出番なんてないんだけどな。

 空は晴れ、風も穏やか。

 歩くには申し分ない日和。

 依頼書に記された「家畜被害の集落」は、この道を二時間ほど。

 どうせただの野犬か、せいぜい狼あたりだろう……そう思いたいが、俺の勘は大体外れてほしい時ほどよく当たる。

 ……ああ~やだやだ。

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